マンションのトラブルは地震や災害などの天災によるものだけではありません。犯罪に巻き込まれた場合の対処も考えておく必要があります。

例えば、自分が貸している部屋の住人が逮捕されてしまったら、どんな対処をすればよいのでしょうか?もしテレビや新聞でその事件が大きく報道されたら、他の部屋の住人や近所の人の生活に大きな支障が出る可能性があります。

そうなったら、一日でも早く契約を解除したい!というのが本音でしょう。しかし、借主は塀の中です。契約解除の手続きはどのように進めればよいのでしょうか。

まず、逮捕されたことを理由に賃貸契約を即刻解除することはできません。逮捕されただけでは法的には無罪です。契約解除は裁判で有罪が確定してからでなければできないということになります。

ただし、例外もあります。以下のような場合です。

同一物件の居住者に暴力、盗撮など明らかな犯罪行為を行った場合。
放火、暴行、殺人などの凶悪犯罪を犯した場合。
暴力団関連の犯罪に関わっている場合。

以上のようなケースに関わっていると証明できれば、借主の同意を得ることなく契約解除が可能です。逆に言えば、軽微な犯罪程度での逮捕での契約解除は難しいと言わざるをえません。

一刻も早く契約を解除したければ、借主に面会し、契約解除を求めなければなりません。借主が契約解除に同意すれば、『合意解除』が成立したことになり解約手続きを進めることができます。

契約解除の同意が得られなかった場合は、家賃滞納を理由に解除する方法もあります。家賃の支払い方法が振込や手渡しなどの場合、支払いすることは不可能な状態です。これが3ヶ月以上続けば、滞納賃料を内容証明で督促し、期日までに支払いがなければ訴訟を起こして、ようやく契約解除ができます。

しかし、家賃をカードで支払っていた場合や、保証人が家賃の支払いを続けるなどして滞納がない場合は、この方法では契約解除できません。裁判の判決を待って、借主と交渉することになります。

拘留が決定した場合、契約解除に応じる借主がほとんどですが合意が得られなかった場合は、明け渡し訴訟を起こして退去を求めることになります。なんとも気の遠くなるような話です。

しかも、契約を解除した後にも問題は残ります。部屋に残された借主の私物を勝手に処分することは法に触れます。『合意解除』と同時に、『残置物に関する所有権放棄の合意書』『残置物の処分同意書』もとっておく必要があります。

この手続きをせずに勝手に部屋の中のものを処分してしまったら、出所した後に損害賠償請求されても文句は言えません。勝手に処分することだけは絶対にやってはいけません。:

同じ建物で自分が所有、使用している近くの部屋で犯罪が起きて、何らかの被害をこうむった場合、例えば上の階の部屋で起こった暴力行為、破壊行為で水漏れなど生活に支障をきたすようなことがあったとしても、保証弁済をもとめるのはさらに困難です。

犯人は事件そのものの容疑者であり、裁判で争われるのは、その犯罪の直接の被害者に対する罪状だけです。その犯罪であなたの所有する部屋が何らかの被害をこうむって弁済を求める場合は、あなたが原告になって民事裁判を起こすことになります。

日本の裁判は判決が下るのが非常に遅いことで有名です。また日本の法律は加害者に非常に甘くなっているのが現状です。勝訴の見込みはほとんどなく、担当してくれる弁護士すら見つからないかもしれません。勝訴しても相手にめぼしい財産がなければ泣き寝入りということも珍しくないのです。

自分で動かないかぎり、誰もあなたの資産を守ってくれないことは知っておいてください。