地震などの自然災害に遭った場合、住居への打撃は一軒家もマンションも深刻なものとなります。しかし、一軒家とマンションでは事情がかなり違ってきます。マンションは大きな建物の中に大勢の人が住んでいます。一口に地震に遭ったといっても、打撃はマンションの階上と階下で大きく違うことは珍しくありません。

また、何棟にも分かれている大型マンションでは、こちらの棟はひび割れ程度で済んだのに、あちらの棟は全壊、ということもあるのです。こういったケースは管理組合で話あって対応を決めることになるのですが、それぞれの被害状況に差があるうえに、一人一人の経済事情も違うのですから、話し合いは、おおいにもめることが予想されます。

実際に平成7年1月17日の阪神大震災で被害をうけたマンションでも住人同士が対立したケースは多かったようです。とあるマンションのケースをみてみましょう。

そのマンションは2棟からなり、両方とも倒壊こそまぬがれたものの、柱や壁にヒビが入る、外壁が剥落するなど、かなり大きな損傷をうけました。亡くなった方が一人もいなかったことは不幸中の幸いでした。

その後、マンションの解析が行われましたが、幸い補修工事完了までに再び大きな地震がきても、倒壊の危険は少ないことがわかりました。とにかく、共有部分の補修工事を早急に行うということで、話はまとまりましたが、問題は補修費用です。

共用部分は管理組合の積立金を切り崩して工面することになり、義捐金も出ましたが、それだけでは足りませんでした。最終的に日本住宅金融公庫からの借入れなど、一戸あたりの個人出費は最終的に250万円にも上ったそうです。

話し合いは建築会社への怒号がとびかうなど、かなりの荒れ模様になったようです。一番紛糾したのは、やはりお金のことでした。1棟の被害は比較的軽いものだったのですが、もう1棟は損傷の激しい部分がありました。

1棟の被害のほうが重いのだから、管理組合を二つに分けて1棟の被害を1棟の管理組合が負担すればいいのでは、という意見が少数ではありましたが、出てきたのです。このときの話し合いを取り仕切っていた理事をの方は非常にショックをうけたといいます。

いままでずっと棟の区別なく仲良くやってきたのに…。結局は平等に負担するということで何とかまとまったのですが、悲しい話です。しかし、マンションでは地震などの災害に限らず何かトラブルが発生したとき、特にお金が絡む場合は、こういうことは起こりえるのです。

このケースの場合は、幸い最終的に全住人が協力しあって補修をすることができましたが、話し合いがこじれて補修工事に支障が生じることもあるのです。管理組合が機能しなければ、マンションの管理もおざなりになり、マンションの価値を下げてしまいます。自分の都合だけを優先できないのがマンションの不自由さです。

マンションはある意味、運命共同体です。そこのところもしっかり考えておきましょう。